季語「秋時雨（あきしぐれ）」の解説と季語を使った俳句の例

秋の季節の季語の一つである「秋時雨（あきしぐれ）」です。

秋時雨

「秋時雨」とは、晩秋に降る小雨や通り雨を指す季語です。秋のしぐれは、激しく降るのではなく、しっとりとした風情を伴うのが特徴です。時雨は一時的に降っては止むことが多く、その静かな雨音や、降り続く雨がもたらす冷え込みには、秋特有の物悲しさや静けさが漂います。秋の終わりに向かう頃、紅葉した葉や落ち葉を濡らす時雨の風景は、日本の情緒や哀愁を感じさせます。俳句では、雨に濡れる自然の景色や、雨音に耳を傾ける静かな時間、人々の心情など、さまざまな情景や感情を織り交ぜることで風情豊かに詠まれます。

季語「秋時雨（あきしぐれ）」を使った俳句の例です。[2]

秋時雨 紅葉の下に 寄り添いて

解説：秋時雨が降る中で紅葉の下に人々が寄り添って雨を避ける様子を描いています。紅葉の鮮やかな色合いと、しとしと降る秋時雨のしっとりとした情景が対比され、落ち着いた雰囲気が感じられます。「寄り添いて」という表現には、人々の温かさや静かな一体感が込められており、秋の雨に濡れる切なさと同時に、どこか心温まる情景が広がっています。紅葉が雨に濡れて一層美しく見える中、雨宿りする人々の姿も含めて、季節の趣が深く伝わる一句です。

秋時雨 色とりどりの 傘ひらく

解説：秋時雨の降る街や風景の中に、色とりどりの傘が一斉に開く様子を描いています。秋の雨はどこか静かで物寂しい印象を与えますが、それに対して「色とりどりの傘」という表現が視覚的な美しさと賑やかさを加えています。傘が開かれる瞬間に感じる人々の動きや、雨粒に濡れる傘の鮮やかな色彩が、句の中で鮮明に浮かび上がります。静かな秋時雨とカラフルな傘のコントラストが印象的で、雨の日にもかかわらず明るさや温かみを感じさせる一句です。