季語「冬近し（ふゆちかし）」の解説と季語を使った俳句の例

秋の季節の季語の一つである「冬近し（ふゆちかし）」です。

冬近し

「冬近し」とは、秋の終わりが近づき、冬の気配が感じられる時期のことを指します。風の冷たさが増し、木々の葉が一層色褪せ、日暮れが早くなる頃、人々は自然と冬の到来を意識し始めます。衣替えや暖房の準備、体感する寒さの変化など、生活の中にも冬支度が見え隠れします。この季語を使った俳句は、秋の名残を惜しみつつ、静かに訪れる冬への期待や緊張感を詠むことが多いです。秋と冬の境目に生じる微妙な変化を捉え、情緒あふれる風景や心情を描くことが特徴です。

季語「冬近し（ふゆちかし）」を使った俳句の例です。

冬近し 重ねし布団 厚くなり

解説：冬の訪れを前にして、布団を重ねるという日常の小さな変化を描いています。「重ねし布団 厚くなり」という表現は、寒さがじわりと深まり始める季節感を素直に表しています。布団が厚くなることで暖かさを求める人々の心情や、冬支度の準備が進む静かな家庭の様子が浮かびます。シンプルでありながらも共感を呼ぶ一句です。

冬近し タイヤを替えに 列並ぶ

解説：冬が近づく中でタイヤ交換に向かう人々の行動を詠んでいます。「列並ぶ」という言葉が具体的で、冬支度を進める忙しさや社会全体の季節への準備を感じさせます。冬への備えが少しずつ日常の風景となっていく様子を的確に捉え、日常生活のリアルな一瞬が俳句に落とし込まれています。冬の到来を前にした少しの慌ただしさと、人々の共通した営みが感じられる作品です。

冬近し 行きかう人の 足早し

解説：冬が近づくことで人々の足取りが自然と速くなる様子が描かれています。「行きかう人の 足早し」という表現は、冬の冷たさや忙しさを無言で表していて、都会や街の光景を思い起こさせます。冬支度の中で人々が急ぐ姿は、寒さに追われるようでもあり、冬の季節特有の動きや空気感を感じさせます。季節の変化に伴う人々の行動をシンプルかつ力強く表現した一句です。