季語「行く春(ゆくはる)」の解説と季語を使った俳句の例

春の季節の季語の一つである「行く春(ゆくはる)」です。

行く春

季語の解説:

「行く春(ゆくはる)」は春の季語で、春の終わりや去りゆく春の季節感を表します。心地よい春の日々が過ぎ去ろうとする寂しさや、次の季節への移り変わりに対する名残惜しさを含んでいます。行く春には、春の象徴である花や草木の終わりが漂い、過ぎ去るものへの郷愁が感じられます。この季語は、春の温かさと別れの寂しさが混じり合った情緒を詠むのに適しています。

季語を使った自作の俳句:

季語「行く春(ゆくはる)」を使った俳句の例です。[2]

行く春や 樹々の緑も 深まりて

解説:春の終わりを告げる「行く春」という季語を軸に、樹々の緑が濃くなっていく情景を詠んでいます。春の淡い緑が次第に深みを増す様子は、自然が夏へと向かう移ろいを感じさせます。「深まりて」という表現が、生命力にあふれた緑の美しさを強調しつつも、春が過ぎゆく一抹の寂しさや余韻を残しています。季節の変化に伴う自然の力強さと、過ぎ去る春への名残惜しさが共存する、静かでありながら味わい深い一句です。

行く春や 駅までの道 汗ひとつ

解説:春の終わりの季節に、駅へと向かう道すがら感じた汗を詠んでいます。「行く春」という季語が、春の名残を表すと同時に、次の季節への移り変わりを象徴しています。「汗ひとつ」という表現が、穏やかな春の暖かさの中に、初夏の気配をほのかに感じさせ、時間の流れや日常のリアルな瞬間を浮かび上がらせます。駅まで走るという具体的な行動が、忙しさの中にも春の終わりをしみじみと感じ取る瞬間を描いており、日常と季節が見事に重なった一句です。

有名な俳句、著名な俳人の俳句:

季語「行く春(ゆくはる)」を使った有名な俳句や著名な俳人の俳句をご紹介します。

行く春や 鳥啼き 魚の目は涙

作者:松尾芭蕉

行く春や 重たき琵琶の 抱き心

作者:与謝蕪村

ゆく春や とげ柔らかに 薊の座

作者:杉田久女

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著者 / Tommy Ikura

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