季語「遅日(ちじつ)」の解説と季語を使った俳句の例

春の季節の季語の一つである「遅日(ちじつ)」です。

遅日

季語の解説:

「遅日」は、春になると日が少しずつ長くなり、夕暮れが遅くなることを表す季語です。冬の短い日が終わり、春の訪れとともに時間がゆったりと流れる感覚を感じさせます。物理的に日の入りが遅くなるだけでなく、春らしい温かみのある光や柔らかい空気感を伴い、穏やかな気分や情景が広がります。古くから俳句では「遅日」を用いて春ののどかさや時間の移ろいを詠むことが多く、人間の心の平穏や季節の変化を象徴する表現として愛されてきました。

季語を使った自作の俳句:

季語「遅日(ちじつ)」を使った俳句の例です。[2]

並木道 ゆっくり歩む 遅日かな

解説:春の並木道をゆっくりと歩く情景を「遅日」という季語で穏やかに表現しています。並木道の静けさと、日が少しずつ長くなる春の時間の流れが、ゆったりと歩む姿と調和し、心地よい春の午後が広がります。慌ただしさとは無縁のひとときであり、読者にも自然と春の心の安らぎや穏やかさを感じさせる句です。時間のゆるやかな流れが「ゆっくり歩む」という言葉と見事に結びついており、春の日常の美しさが伝わります。

遅日の中 古寺の鐘 響きけり

解説:遅日の春の穏やかな時間と、静けさの中に響く古寺の鐘の音を描いています。「遅日の中」とは、夕暮れがゆっくりと訪れる春の光景であり、その中で響く鐘の音は、自然と心に沁み込んでくるようです。古寺の存在感と鐘の響きが、春の柔らかい光や静けさに包まれて、厳かでありながらも温かみのある情景を作り出しています。季語「遅日」が時間の流れをゆったりと感じさせ、古寺と鐘の音が過去と現在、静と動をつなぐ役割を果たしている、落ち着きと趣のある一句です。

有名な俳句、著名な俳人の俳句:

季語「遅日(ちじつ)」を使った有名な俳句や著名な俳人の俳句をご紹介します。

遅き日の つもりて遠き 昔かな

作者:与謝蕪村

この庭の 遅日の石の いつまでも

作者:高浜虚子

プロフィール画像

著者 / Tommy Ikura

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